会長声明・意見
最低賃金額の大幅な引き上げ及び中小企業支援策の実現を求める会長声明
2024/04/26
2 2023年度の山口県の地域別最低賃金は目安通り40円の引上げをし、928円であったが、時給928円しかなければ、1日8時間、月22日働いても、月収16万3328円、年収195万9936円にしかならない。これでは物価が急騰している昨今、山口県内の労働者が安定した生活を送れるとは言い難い。労働者の安定した生活を確保するには最低賃金の大幅な引き上げが必要である。
3 2023年度の東京都の地域別最低賃金は1113円、山口県との格差は185円あり、東京都と山口県の格差は年々拡大している。しかも、総務省統計局が作成している人口推計(令和5年10月1日現在)によれば、東京の人口は増大傾向にあるが、山口県の人口は減少傾向にある(註1)。労働力を確保し地域経済を活性化させるには最低賃金の大幅な引き上げが必要である。
4 最低賃金の引き上げには中小企業の支援も必要である。東京商工会議所・日本商工会議所の調査によれば、「賃上げで中小企業が自発的・持続的に賃上げできる環境整備のための支援策」として,「景気対策を通じた企業業績の向上」(43.5%)の他、「取引価格の適正化・円滑な価格転嫁」(41.1%),「税・社会保障負担等の軽減」(39.1%)が挙げられている(註2)。
「取引価格の適正化・円滑な価格転嫁」については、内閣官房・公正取引委員会が作成した令和5年11月29日付け「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に沿って、公正な競争を阻害するおそれがある発注者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法に基づく厳正な対処を行う必要がある。
「税・社会保障負担等の軽減」については、社会保険料の事業主負担分を減免するなどの中小企業支援策が必要である。
5 よって、当会は、
① 厚生労働大臣、中央最低賃金審議会及び山口労働局長及び山口地方最低賃金審議会に対し、労働者の安定した生活を確保し、賃金に関する地域間格差を是正するため、山口県の地域別最低賃金の大幅な引き上げの努力をすること
② 国会及び厚生労働大臣に対し、最低賃金の大幅な引き上げを実現するため、「景気対策を通じた企業業績の向上」及び「税・社会保障負担等の軽減」の努力をすること
③ 内閣官房及び公正取引委員会に対し、「取引価格の適正化・円滑な価格転嫁」が実現されるよう、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に沿って、公正な競争を阻害するおそれがある発注者に対し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法に基づく厳正な対処を行うことをそれぞれ求める。
註1 総務省統計局が令和6年4月12日に発表した「人口推計 2023年(令和5年)10月1日現在)」(ポイント)の表2(都道府県別人口増減率)によれば、東京都の人口増減率は2023年が+0.34、2024年が+0.20であったのに対し、山口県の人口増減率は2023年が-1.21、2024年が-1.06であった。
註2 東京商工会議所・日本商工会議所が作成した2023年3月28日付け「最低賃金及び中小企業の賃金・雇用に関する調査」調査結果。
2024年(令和6年)4月26日
山口県弁護士会
会長 鶴 義勝
山口県弁護士会
会長 鶴 義勝