会長声明・意見

憲法記念日を迎えるに当たっての会長談話

2024/05/03
 本日は、日本国憲法が施行されてから77年目の憲法記念日です。
 2022年2月に始まったロシアのウクライナへの侵攻、2023年10月7日より続いているイスラエルのガザ地区への侵攻は、どちらもいまだ解決の目途はたっていません。ウクライナからは、多くの人が難民として国外に逃れました。2023年10月から2024年2月までの4カ月間に死亡したガザ地区の子どもの数は1万2300人以上に上るとの報道もあります。多くの一般市民が犠牲となっています。
 また、ロシアのウクライナ侵攻の影響等により、原油や天然ガスの国際商品価格の上昇が加速するなど、世界各国が経済的な影響を受けています。
 これらの戦争等により、世界中に重大な被害と混乱、不安がもたらされています。
 このような不安な社会情勢の中で、相手国の領域内にあるミサイル発射手段等を攻撃するためのいわゆる「敵基地攻撃能力」や「反撃能力」の保有を進めるべきだとの見解があります。
 しかし、「敵基地攻撃能力」や「反撃能力」の保有については、日本国憲法9条に抵触する疑いを払拭できません(2023年8月8日付け「「反撃能力」の保有に反対する会長声明」)。
 また、国会では、大災害や国家有事、感染症蔓延などの非常事態に備えて、国会議員の任期を延長することなどを含めた憲法改正が必要であるとの論調がますます強まり、緊急事態条項を加える憲法改正を進める方向で議論が重ねられています。
 しかし、緊急事態条項の創設は、極度の権力集中による政府の権力濫用の危険性、国民主権の原理への弊害が懸念されます。また、緊急事態に対する対応は、緊急事態においても選挙を実施できる制度に改める等で対応可能であり、そうすべきとも考えられます(2024年3月28日付け「選挙を停止して国会議員の任期を延長する憲法改正案に反対する会長声明」)。
 当会は、立憲主義を堅持し、国民主権に基づく政治を実現することにより個人の人権を守る立場から、引き続き憲法擁護のための活動を積極的に行ってまいります。
以 上

2024年(令和6年)5月3日
                    山口県弁護士会会長
                          鶴   義 勝