会長声明・意見

「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」 (いわゆるカジノ解禁推進法案)に反対する会長声明

平成27年10月27日
山口県弁護士会 会長 清水弘彦
1 第189回通常国会に提出された「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆるカジノ解禁推進法案)については,同国会では実質的な審議に入らないまま会期末を迎え,衆議院内閣委員会において継続審議の議決がなされたところであるが,カジノ合法化を目指す議員連盟は,なお同法案の早期成立を目指す考えで一致したとの報道がなされている。

2 この法案は,カジノ施設と「会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設」である「特定複合観光施設」を想定し,これを設置できる区域としての「特定複合観光施設区域」の整備を推進することが,「観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資する」とするものである。

3 しかしながら,カジノ施設を設けて民間賭博を解禁することは,現在においても深刻なギャンブル依存症の問題を,更に悪化させるおそれが大きい。厚生労働省研究班の調査によれば,我が国でギャンブル依存症の疑いのある者は536万人,成人人口の4.8%と推計されており,1%前後である諸外国と比較して際立って高い。我が国は世界最悪のギャンブル依存症大国であり,ギャンブルによって多くの経済的破綻や犯罪が生み出されているのである。

4 法案の定めるとおり,カジノ施設と会議場施設,レクリエーション施設,展示施設,宿泊施設等が一体となった「特定複合観光施設」が設置されるならば,家族で出かける先にカジノ施設が存在することとなる。青少年は,幼少時からカジノ施設に接することで賭博を抵抗なく受け入れることとなりかねず,その健全育成に悪影響を及ぼすことが強く懸念される。

5 さらには,暴力団等の反社会的勢力の関与・介入,マネー・ローンダリングへの利用,犯罪の発生,風俗環境の悪化等も予想されるにもかかわらず,これらに対する具体的で有効な予防策は示されていない。

6 カジノを含む賭博には,こうした多くの弊害が避けられない。それゆえ,刑法は,賭博罪を設けて賭博を禁止しているのである。十分な検証がなされていない経済的効果の名の下に,民間賭博であるカジノを,刑法の原則に反して合法化しようとする,いわゆるカジノ解禁推進法案に対しては,当会は強く反対し,その廃案を求めるものである。

以上