会長声明・意見

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受けて民法における差別的規定の改正を求める会長声明

平成27年12月24日
山口県弁護士会 会長 清水弘彦
平成27年12月16日,最高裁判所大法廷(寺田逸郎裁判長)は,夫婦同氏を強制する民法第750条について,「合憲」として,同条は憲法第14条1項及び第24条に違反しておらず,それを放置してきた立法不作為も違法と評価されるには至っていないと判示した。一方,女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条については,立法不作為の違法は認めなかったものの,「違憲」として,同条は憲法第14条1項及び24条2項に違反しているとし,また,「本件規定のうち100日超過部分は,遅くとも上告人が前婚を解消した日から100日を経過した時点までには,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとしてその立法目的との関連において合理性を欠くものになっていた」として強く国に立法を促した。
  民法第733条を違憲であるとした点については,当会の主張と合致するものであり,妥当なものと高く評価するが,女性の再婚期間を設けることは,その期間を100日に短縮したとしても必要最小限にしてやむを得ないものとはいえない。

  また,民法第750条が定める夫婦同氏の強制は,憲法第13条及び同第24条第2項が保障する個人の尊厳,同第24条第1項及び同第13条が保障する婚姻の自由,同第14条1項及び同第24条第2項が保障する平等権並びに女性差別撤廃条約第16条第1項(b)の規定が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)の規定が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(氏及び職業を選択する権利を含む。)」を侵害するものである。今回の民法第750条にかかる最高裁判所判決では裁判官5名が憲法24条違反を指摘しており,岡部意見は「少なくとも現時点においては,夫婦が別の氏を称することを認めないものである点において,個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き,国会の立法裁量の範囲を超える状態に至っており,憲法24条に違反するもの」とし,さらに山浦反対意見は,「本件規定は憲法24条に違反し,本件規定を改廃する立法措置をとらなかった立法不作為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるべきものである」として,いずれも国による速やかな改正を求めている。
  法制審議会は,1996年に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し,男女とも婚姻適齢を満18歳とすること,女性の再婚禁止期間の短縮及び選択的夫婦別氏制度の導入を答申した。また,国連の自由権規約委員会は婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条及び女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条について,女性差別撤廃委員会はこれらの規定に加えて夫婦同氏を強制する民法第750条について,日本政府に対し重ねて改正するよう勧告を行ってきた。法制審議会の答申から19年,女性差別撤廃条約の批准から30年が経つにもかかわらず,国会は,上記各規定を放置してきたものである。
  当会は,国に対し,民法第750条及び同第733条並びにこれらの規定とともに法制審議会にて改正が答申され国連の各委員会から勧告がなされている同第731条(婚姻適齢)を速やかに改正することを強く求める。

以上