会長声明・意見
司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
平成28年1月20日
山口県弁護士会 会長 清水弘彦
山口県弁護士会 会長 清水弘彦
まずはメッセージをお寄せいただいた国会議員の皆様に対し感謝の意と敬意を表するものである。
メッセージを寄せられた国会議員は,与野党を問わず広がりを見せており,司法修習生への経済的支援の必要性についての理解が得られつつあるものと考えられる。
司法制度は,社会にあまねく法の支配を行き渡らせ,市民の権利や公正な社会を実現するための社会的基盤である。国はかかる公共的価値を実現する担い手である法曹を公費をもって要請すべきであるとの理念のもとに,終戦直後から法曹養成のための司法修習制度を運営し司法修習生に対し給与も支払ってきた。しかし,当時司法修習生を3000人に増員すると想定されていたため,財政的な困難さも要因となり,2011年11月から,修習期間中に費用が必要な修習生に対しては,修習資金を貸与する制度(貸与制)に変更された。その結果,司法修習生は,それまでの大学,法科大学院時代に受けた奨学金等の負担に加えて,司法修習期間中の修習資金の負担を新たに抱えることになり,日本弁護士連合会が行った第68期司法修習生のアンケート結果によれば司法修習生のうち46パーセント程度が金400万円以上の負債を抱える(うち15パーセント程度が金800万円以上の負債を抱えている)ことになっている現状がある。このようなことも加わり法曹を目指す者は,年々減少の一途をたどっており,その状況は激減ともいえる状況である。このような現状は,志を高く持つ者の法曹への途を閉ざす結果となり,司法制度という社会的基盤を脆弱化させ, ひいては法の支配そのものを危うくする恐れすらある。
こうした事態を重く受け止め,法曹に広く有為の人材を募り,法曹志望者が経済的理由によって法曹への道を断念する事態が生ずることのないよう,また,司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整えるため,司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施されるべきである。
2015年6月30日,政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において,「法務省は,最高裁判所等との連携・協力の下,司法修習の実態,司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況,司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ,司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。
これは,司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな一歩と評価することができる。法務省,最高裁判所等の関係各機関は,有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から,司法修習生に対する経済的支援の実現について,直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
当会は,司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)に対し,国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること,政府においても上記のような決定がなされたこと,及び,既に司法修習生を3000人とするとの方針は放棄されたのであるから,財政的な問題も解決していることを踏まえて,国会に対して,給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の改正を求めるものである。
以上