会長声明・意見
平成29年司法試験の合格発表における会長声明
2017年(平成29年)9月12日
山口県弁護士会 会長 田畑元久
山口県弁護士会 会長 田畑元久
司法試験合格者数がどうあるべきかということについては、昨今、社会の注目を浴びているところであるが、司法試験合格者数の急増が司法基盤整備を伴わないまま進行したことが、法曹の需要との乖離を増大させて司法修習後の就職難を招き、法曹志願者数の減少という事態まで引き起こしていることからすれば、当会としては、司法試験合格者数は、更なる削減が図られるべきであるとして、会長声明の発出などしてきた。
特に、法曹の質については、司法が市民の権利義務や社会正義に大きく関わるものである以上、司法を担う法曹の質の向上も市民から望まれているところである。法曹養成制度改革推進会議の中間とりまとめにおいても、「法曹養成制度が法曹の質を確保しつつ多くの法曹を養成することを目的としていることに鑑み、輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものでないことに留意する必要がある」と注意を促していたところであり、当会も、司法修習を充実させるなどして、法曹の質の確保に務めてきた。
しかるに、法曹志願者の減少は、ここ数年の司法試験の受験者数の急減という事態まで招来し、本年度の司法試験出願者数が6,716名(昨年より1,014名減)となったことに鑑み、当会は、本年7月25日、司法試験合格者の判定にあたっては、1500人程度以上とされる合格者数の確保のみが優先されるべきではなく、司法を担う法曹の質の維持・向上の要請をふまえた厳正な審査を行うべきであるとする会長声明を発表していたところである。
ところが、本年の司法試験の合格率は、受験者数との比で25.9%となり、昨年の合格率である22.9%を上回った。この合格者数は、法曹養成制度改革推進会議の中間とりまとめが示した1500名程度というものに近いものではあるが、この中間とりまとめが示した人数は、司法基盤が整備されることを前提としているものであるところ、この整備が進まないままに受験者数が急減しているという事態からすれば、合格者数は受験者数の減少に合わせて削減を進めるべきであった。
当会は、司法試験合格者数の更なる削減を求め、今回の司法試験合格者の判定に抗議するものである。