会長声明・意見
憲法公布日に当たっての会長談話
2023/11/03
日本は空襲や原爆投下により焼き尽くされ、多くの市民は住居、財産を失いました。そして、戦争は、多くの市民から財産だけでなく、生命までも奪ってしまいました。
このような戦争の惨禍を踏まえて、日本国民自らが、国会の慎重な審議の上で日本国憲法の公布に至りました。
従って、日本国憲法前文では、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」し、「主権が国民に存すること」を宣言しています。
ときの政府によって戦争がはじまり、そのために日本国及び市民らに戦争の惨禍をもたらし、のみならず、周辺国にも多大な損害を与えたことから、日本国憲法は、第9条に戦争放棄と戦力を保持しないという徹底した恒久平和主義をとっています。
ところが、国際的にはロシアによるウクライナへの軍事侵攻やイスラエルパレスチナ紛争などの軍事紛争は、現在も続いています。
そして、我が国においても、政府は、相手国の領域内にあるミサイル発射手段等を攻撃するためのいわゆる「敵基地攻撃能力」や、更には、攻撃対象を「敵基地」以外に拡大することになりかねない、いわゆる「反撃能力」の保有を進めようとしています。
しかし、戦力不保持を掲げる憲法9条の下、敵基地攻撃能力や反撃能力を保有するべきではありません。敵基地攻撃能力、反撃能力の保有は、近隣諸国に脅威と不信を呼び起こして日本が戦後築いてきた平和的外交関係を損ねかねないものであり、決して日本国の安全性を高めるものとはなりません。また、我が国が、誤った情報に基づいて、他国に対して先制攻撃をしてしまうという危険もあります。例えば、対イラク戦争のときには大量破壊兵器があるという誤った情報に基づいてアメリカが開戦し、我が国がいち早く支持を表明したという歴史的事実もあります。万が一、同様の事態が生じて、我が国が他国を先制攻撃するようなことがあったら、取り返しがつかない事態になります。政府は、武力に依拠するのではなく、日本国憲法が掲げる恒久平和主義、国際協調主義の原理に基づき、国際平和の維持のために最大限の外交努力を尽くすべきです。
私たち山口県弁護士会は、これからも恒久平和主義、立憲主義を堅持し、基本的人権を擁護し、社会正義の実現に努めてまいります。
以 上
2023年(令和5年)11月3日
山口県弁護士会会長
松 田 訓 明
2023年(令和5年)11月3日
山口県弁護士会会長
松 田 訓 明