会長声明・意見

憲法改正手続法を抜本改正せずに憲法改正手続を行うことに反対する会長声明

2018年(平成30年)9月27日
山口県弁護士会 会長 白石資朗

  昨今、次の臨時国会において憲法改正発議がなされ、国民投票が行われる可能性がある との報道がなされている。
  最高法規たる憲法の改正には特に慎重な判断が求められ、主権者である国民に、改正の必要性及び懸念が明確に示され、検討に十分な情報が公正に提供された上で充実した議論と熟慮がなされ、多数の国民の意思が正確に反映されなければならない。
  しかし、日本国憲法の改正手続に関する法律(憲法改正手続法)は、国民の間の公正で十分な議論と熟慮、それに基づく多くの国民の意思が正確に反映されるものとはなっていない。
  例えば、同法には以下のような問題がある。
・国会で発議後に国民投票まで最短で60日しかなく、国民的議論と熟慮には短かすぎる。
・最低投票率等の定めがないため、ごく少数の賛成票で憲法が改正されかねない。
・国民投票運動のための有料広告放送が投票日15日前まで自由にできるとされているが、財力の差による情報発信の格差が予想され、民意が歪められかねない。
・組織的多数人買収・利害誘導罪は、処罰の限界が不明確で、広汎な規制を招きかねない内容となっており、国民の正当な運動・意見表明が萎縮させられかねない。
・公務員・教育者の国民投票運動の制限は、不利益処分の限界が不明確で、広汎な規制を招きかねない内容となっており、国民の少なくない割合を占める公務員・教育者の正当な 運動・意見表明が萎縮させられかねない。

  同法成立時に、参議院では、上記の問題点を含む18もの項目で見直しを求める附帯決議がされたものの、上記の問題点については、改正されなかった。
  日本弁護士連合会(日弁連)も、2009年11月18日付け意見書、2018年5月25日総会決議などで上記の問題点を含む8項目の抜本的な改正を求めているが未だ実現していない。
  国の在り方を左右する憲法の改正は、内容的にも手続的にも曇りのない正当性が求められるはずであるところ、現在の憲法改正手続法にはあまりに重大な問題が多くある。
  当会は、憲法改正手続法の上記に挙げた問題点を含む抜本的な改正を求め、かかる改正をしないままに憲法改正手続を行うことに反対する。
以上