会長声明・意見

夫婦同姓の強制及び再婚禁止期間等 民法の差別的規定の早期改正を求める会長声明

平成27年5月25日
山口県弁護士会 会長 清水弘彦
夫婦同姓を強制する民法第750条が憲法及び女性差別撤廃条約に違反するとして,男女5人が国に対して損害賠償を求めた訴訟の上告審で,最高裁第三小法廷は,本年2月18日,審理を大法廷に回付した。また,女性だけに離婚後6か月間の再婚禁止期間を定める民法第733条が違憲であるとして,女性が国に損害賠償を求めた訴訟の上告審についても,同日,第三小法廷が審理を大法廷に回付した。
 日本政府は,国際連合の自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会から,選択的夫婦別姓を認めていない民法第750条及び女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条のほか,婚姻適齢について男女の差を設けている民法第731条について,繰り返し懸念を表明され,これらの差別的規定の改正のために早急な対策を講じるよう要請されている。しかし,法制審議会が平成8年にこれらの条文を改正する民法改正案要綱を決定してから,いまだに民法の改正は実現されていない。平成22年1月には法務省が上記要綱と同趣旨の法律案を準備したものの,同法律案を国会に提出するための閣議決定は行われなかった。
 結局,法制審議会が上記要綱を決定してから約19年もの期間が経過し,婚姻によって意に反して改姓を余儀なくされた一方配偶者の人格的利益が侵害された状態が続いている。また,今日の科学技術の発達によって親子関係の確定が容易になったにもかかわらず女性のみが再婚禁止期間の制約を受けるという差別も継続し,婚姻適齢に係る合理的根拠のない差別も継続している。
 民法第733条及び第750条の違憲性等を問う上告審の審理が大法廷に回付されたことの報道を契機に世論の関心が高まっている今,当会は,国会に対し,最高裁判所による司法判断を待たずに,両規定を含む民法の差別的な各規定を速やかに改正するよう,強く求める。
以上